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IT業界で働くアラサーの徒然雑記。邦画・ミステリ小説の感想や、抑うつ記録など。

似鳥鶏『パティシエの秘密推理 お召し上がりは容疑者から』

 初めての読書感想エントリ!

<あらすじ>

警察を突然辞めた惣司智は兄の季が継いだ喫茶店でパティシエとして働き始めた。鋭敏な推理力をもつ智の知恵を借りたい県警本部は秘書室の直ちゃんを送り込み、難解な殺人事件ばかり相談させている。弟をお菓子作りに専念させたい兄は、なくなく捜査を手伝いを。人が好い兄の困った事態を見かねた弟は、しぶしぶ事件解決に乗り出す羽目に…。

<感想(ネタバレあり)>

本屋さんで気になったので衝動買いしちゃった。『珈琲店タレーランの事件簿』のような軽めの日常系ミステリかなーと思ってたんだけど、違いましたね。殺人を扱った重めのお話で、良い意味で期待を裏切られたというか。

第1話は文体やキャラに馴染めず、ちょっと読みにくいと感じたかなあ。直ちゃんの口調や無理めな設定とか、弟の智くんのナヨナヨした感じとかはあんまり…と思ってしまったし、兄のみのるさんは軽い気持ちで首を突っ込んでいるように見えてしまったり。地の文もなんか、個人的にすっと入ってこない感じがして、1話を読み終えてから続きを読むまでに暫く間を空けちゃいました。

でも第2話以降はキャラにも慣れ、どんどん引き込まれました。途中で登場した的場さんが好みのキャラクターだったのもあるかな。直ちゃんの可愛さとか、みのるさんの優しさとか、智さんのカッコよさなんかもわかってきて、的場さんと智さんのじれったい感じにときめいたり。だからこそ最後の第4話は夢中になって読んでしまったし、ラストは衝撃的でした…。

1話から3話までは事件の真相を全く想像せずひたすらに読み進めていた感じだったけど、4話は途中で犯人を予想してみてました。まあ推理して、でなく直感的にだけども。結果、20年前の事件の犯人と7年前の事件の動機は当たったけれど、7年前の犯人は当たらず。というか、真っすぐ読み進める中で全く想像してなかった展開でした。切ないなあ。私は「殺していい」には賛成できないけれど、「許さなくていい」とは思う。許さない=殺す、となるのなら、また話は違ってくるけれど…。ほろ苦くて少し寂しい読後感でした。

ミステリとしてはフェアなのかな?まだ読み返したりしてないし、そもそも私はミステリを読み慣れていないけど、読む手を止めて推理すれば真相を導けるのかしら。前半は智さんが安楽椅子探偵的な役回りで、あっという間に事件を解決してしまうので、私の頭では着いていけず突飛に感じるところもあったけど。もう一回読んでみようかな。

あと、パティシエが主人公ということで、お菓子の描写が細かかったです。
読み終わったあと、モンブランが食べたくなる本でした。

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ちなみに上記で少し触れた『珈琲店タレーランの事件簿』はこちら。

 

珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

 日常の謎系ミステリで、中盤までは軽さに肩透かしを食らった感じだったけれど、叙述トリックが大好きな私は最終話で大満足。キャラクターも魅力的で良かった。2も読んだけど、1のほうが好きだな。